フェイズリー
 いま、防災減災の分野でキーワードになっているのが「フェーズフリー(Phasefree)」です。世界でも有数の災害大国である日本。日常時と非常時という2つのフェーズをフリーにする「フェーズフリー」の発想。身のまわりにあるモノやサービスを、日常時はもちろん、非常時にも役立てようとする考え方が「フェーズフリー」です。
 フェーズフリーとは:https://phasefree.or.jp/phasefree.html

 日常時(平時)には、宿泊施設や公共施設、地域の活性化拠点として活用します。非常時(災害時)には、避難所や仮設住宅として活用し、住民のいのちと健康を守ります。もちろん、他地域の災害支援にも活用できます。
 現在、「フェーズフリー」の立場から大規模災害時の仮設住宅や避難所をみてみると、非常に有効なシステムが、「レスキューホテル」と「ムービングハウス」の2つがあります。

デベロップ社が運営する「レスキューホテル」
 第1に、株式会社デベロップ社などが運営する「レスキューホテル」です。「レスキューホテル」は、建築用コンテナモジュール1ユニットを、独立した1棟・1客室として運営するコンテナホテルです。日常時には観光やビジネスの拠点として利用され、災害時には被災地に迅速に駆けつけ、避難所などに活用されます。コロナ禍において長崎県の三菱造船所に、千葉県と栃木県のレスキューホテル30棟が移動され、感染対応に当たりました。


「ムービングハウス」岡山、北海道、茨城、熊本などで大きな実績
 第2に、一般社団法人日本ムービングハウス協会が展開する「ムービングハウス」です。「ムービングハウス」は、災害救助法が適用され、岡山県倉敷市、茨城県常陸大宮市、熊本県球磨村などで仮設住宅としての導入されました。昨年の令和2年7月豪雨では、茨城県小美玉市内などで宿泊施設として利用されていた「ムービングハウス」を、熊本県球磨村に移送し、わずか1ヶ月で応急仮設住宅が整備されました。

 「レスキューホテル」は、大規模災害が発生すると直ちに、被災地に投入されます。被災者の避難場所、救援部隊やボランティアの拠点として活用されます。デベロップでは、陰圧診察室仕様、テレワーク・会議室仕様、オフグリッド(電気や水道などの公共インフラに依存せずに運用可能な居室)仕様、キッズフル(子どもの遊びの空間)仕様の「レスキューホテル」を出動させることができます。
 一方、「ムービングハウス」は被災住民の生活再建のために、応急仮設住宅や集会場、診療施設、介護施設、ショッピング施設などとして活用されます。プレハブ仮設住宅と比べると、3倍程度のスピードで建設され、入居が可能となります。茨城県常陸大宮市では、最短1週間で被災した方に鍵を渡すことができました。
 「フェーズフリー」の大原則は、災害時の利用が終了した後に“再利用”するということです。従来のプレハブ住宅は、使用後は原則解体、廃棄されます。そのために、「レスキューホテル」や「ムービングハウス」に比べて、撤去費用などを含めると割高になってしまいます。資源の無駄遣いにもなります。「レスキューホテル」や「ムービングハウス」は、限られた資源を有効に活用するサステナブルな「SDGsの精神に則った」なツールです。